第9章 貴方だけは消えないで
学校へは行く気になれず
普段ならお小言の一つも零すであろう生瀬もこの時ばかりは何も言わなかった
切りっぱなしにしていたスマホの電源を立ちあげると
鍵のかかったフォルダをじっと眺める
この中にたった一枚だけ保存されている画像は俺が眠っている間にコウタが勝手に撮ったもの
この時俺は
白くて華奢な、それでいて傷だらけのコウタの腕の中でどんな夢を見ていたのかな
たった一年と少しで呆気なく散ってしまった、偶然拾った生命
『雅紀さんにも恋が出来ますように 』
そう言っておまじないのようにくれた、キス
葛藤も苛立ちも生身の身体で受け止めてくれたお前に
俺は何一つ返してやれなかった
『上手く行くといいね 』
『 何がだよ...』
無理だよ、コウタ
俺には人を好きになる資格なんてない
恋なんてしちゃいけないんだ