第1章 Trip
「彼女は貴様の対応に恐れトラウマとなり、男性恐怖症になってしまったと推測している。あくまで推測だがな…」
「…嘘だよね?」
卍固めをされたまま顔だけ彼女に向けるが、反応は黒だった。
「……多分そうだと思います。以前は男性から声をかけられても普通に話せましたし、軽いボディータッチも大丈夫でした…。
でも今は……一緒にいるだけで、体が拒否反応を起こしてます…」
すみません、と呟き目を伏せ依然震えている身体を窘めるように両手で揺すった。
「…名前を聞いてもいいか?フロイライン。」
「…っ…リートです。もしかして貴方、ドイツの方でしょうか…?」
!? 貴様寝る時ぐらい下を履け💢とフランスを解放しつつ返答に悩む。
「確かにドイツなのだが…うむ……ドイツ、つまり国そのものだ。」
「…国そのもの、と言うのは貴方自身がドイツ連邦共和国でありドイツ連邦共和国が貴方自身…と言うことですか?」
訝しげな顔をしているが本人は至って真剣なのだろう。男性恐怖症になってしまったことにも関わらず、目を逸らさずに俺をみている。
「そういうことだ。」
ふぅ…と緊張の糸がほぐれたように語り出すリート。
「…きっと私が住んでいた場所と、今ここにいる場所とでは時間……いえ、次元が違っているんですね。
実際言葉が通じてますし…タイムトリップならぬディメンショントリップですね、始めて体験しました…」
普通とはかけ離れた体験をして驚きと期待を隠せないリート。先程まで強張っていた表情が徐々に柔らかくなっていくのを見て、ドイツは安堵し1つの疑問を思い出した。
「なぜ俺がドイツだと分かったんだ?」
「…あぁ、先程私のことをフロイラインと呼んでいましたよね…?それで分かりました。
国籍は日本ですが母がドイツの生まれなので少し…」
言われてみれば日本人にしては顔の彫りが深いし目は緑色だ。髪型は日本に似ているな…。
「…そんなに見ないで下さい……////」
「すまんっ////」
「いえ、ドイツさんではなくて…後ろの……フランス…さん?」
彼女が手で示した方向にはドイツの背後にリートの顔を覗き込むような体勢をしている(服を着た)フランスがいた。