第2章 French ⚠
「着いたよ、お嬢さん。」
「…うっ…ひぐっ……え?」
抵抗をやめ、今まで早送りになっていた風景が見えるようになった。涙で霞んではいるがそれでも尚、美しい景色にリートは目を奪われた。
「…エッフェル塔?」
「ここのカフェ、ワインも美味しいしお菓子も絶品なんだよ。しかもここから見えるエッフェル塔は格別キレイなんだ。」
下の街並みが一望できる程高い場所に位置するここのカフェには広いテラスがあり、屋外なのに殆ど汚れがないイスとテーブル。それぞれのテーブルには紫色の花が添えられている。
「…降ろして下さい」
フランスは抵抗されず、紫色の花に興味を惹かれているリートを見て優しく微笑み、「どうぞ。」と丁寧に降ろした。
ゆったりとした足取りで花に近付くリート。呼吸をしているうちに、甘く爽やかな香りが酸素と共に肺に満ちる。
「この花…ライラックですか?」
視線は合わせないが、しっかりと問いかける彼女の芯のある声にフランスは感心する。
彼女の声から男性が苦手になったことに向き合おうとするの意志を感じ取ったのだ。
「そう、lilas(リラ)だよ。香りが強すぎない子達を選んでるから、ワインを飲んでいても邪魔することはなくて逆にイイ感じにマッチするんだよ♪」
椅子に腰掛け、改めてライラックの香りをスッと嗅ぎそしてエッフェル塔を眺める。無表情に変わりないが目は輝きを失っていない、むしろ先程よりも輝きが増している。
「…綺麗」
「そうだろ?意外と穴場なんだここ♪そうだ!せっかくだし、何か飲むかい?」
さりげなく正面に座り、頬杖をつくフランス。
「えっ?私、お金持ってないですし、それに…」
「それに?」
「…それに………です…(ボソッ)」
「?」
「んん恥ずかしいんです…男性と一緒にお茶だなんて、しかも初めて出会った方と…」
顔を真っ赤にし、モジモジしだすリートの様子を見てフランスは『何この子めちゃくちゃかわいいんだけど////』と顔に出さず心の中で叫んだ。あわよくばお持ち帰りしたいという衝動にかけられるが、
「そんなこと気にしなくていいんだよ。じゃあ、ここのオススメにしようか。」
と平静を装ったまま立ち上がり、店内にいるマスターへ注文をしに行った。