第2章 French ⚠
フランスが店内に入るのを確認すると、リートはハァ…と溜まっていた緊張を全て吐き出すように大きなため息をついた。
今は落ち着いているが、フランスが戻って来ればまた症状がでるだろう。
だか、そんな考えも和らげてしまう香りがリートを包む。
『あっ……なんか不思議…。この香りを嗅ぐと自然と落ち着いてくる…』
自分を包む全てのものをゆっくりと、丁寧に鼻から喉、肺へ取り込む。
『ライラック、全部の席にあるんだ…。それにしても全然嫌な香りじゃない…。そよ風が吹いた時にふわっ…て香ってくるような…そんな……優しい香り…』
風に任せて飛んでくる香りと共に、聞こえてくるたくさんの音を楽しむように目を瞑る。鳥のさえずり、街の人々の声、お茶の香り、そして………足音?
「おまたせ、はいコレ♪」
カチャリ、とリートの目の前に紅茶が置かれる。
「Thé des moines(テ・デ・モアンヌ)。昔、チベットの僧達の間で作られた紅茶さ。緑茶もベースに入ってるから日本人…あぁでもハーフだっけ?まぁ、口に合うんじゃないかなぁって。それにsouci(スーシ)、マリーゴールドの香りを茶葉に移してるからリラとは変わった香りが楽しめるよ♪」
そっとカップに手を伸ばし口元に持っていきフーッ…と冷ます。香りと共に流れ込んでくる紅茶の味を確かめる。
「…おいしい。なんか…飲みやすいです、香りがとっても爽やかで。」
一瞬だが、顔がほころびる彼女を見てフランスは安堵した。一瞬でも心を許してくれたことに喜びを感じ舞い上がる。
「そうだろ〜♪リラとは変わって柑橘系みたいな香りがまた最高だろう。」
「はい、とっても…♪」
にこり、と微笑みをフランスに向けるリート。
不意打ちを喰らったフランスは一瞬何が起きたか分からないというように硬直し、ボッと顔が熱くなる。
『何この不意打ち////ホントめちゃくちゃかわいいんだけど/////』
「そ、そういえばお兄さんのこと、少しは見てくれるようになったのかな?
さっきよりも緊張してないみたいだし、表情が明るくなったよね♪」
平静を保とうとしてるが、取ってつけたような笑顔と共に動作が若干ギクシャクしている。だが、そんなことにも気付かずにリートは自身の変化に驚いている。