第17章 1月31日*黒子*
料理が苦手な私はもちろんケーキなんか作ったことなくて。
市販のスポンジを使ってしまえば簡単だけれど、ちゃんと一から作ったものを贈りたかった。
失敗の連続に心が折れそうになるけれど、テツくんの嬉しそうな笑顔を思い浮かべれば踏ん張れた。
誕生日が刻々と近付く中、不意にテツくんは教室で向かい合わせに座る私の手をとって、少し眉を寄せた。
「、ここ赤くなってますけど…。火傷ですか?」
昨日の夜、熱々の鉄板が手に触れてしまい、その部分が赤くなってヒリヒリと痛んでいた。
でもケーキ作ってて火傷しましたなんて言えないし!
「水かと思って蛇口捻ったらお湯が出てきちゃって!大したことないし、大丈夫だよ。」
「そうですか…。最近隈も出来てますし…心配です。」
さすが人間観察をよくしているテツくん。
最近ケーキ作りの練習で、夜遅くまで練習する日が続いている。
「大丈夫だって。テツくんは心配性だなぁ。」
気持ちを晴らすために笑顔を向けると、テツくんは少しだけ笑ってくれた。
さぁ、明日はいよいよ誕生日。
プレゼントは用意した。
あとは素敵なケーキを完成させるだけだ。
テツくん、ビックリしてくれるかな?
喜んでくれるかな?