第17章 1月31日*黒子*
もうすぐ近付く彼の誕生日。
「何か欲しいものある?」って聞いてみても、優しい彼はふっと目を細めてこう答えた。
「特にはないですね。…、あまり気を遣わないで下さい。」
そっちこそと言わんばかりの気遣いに胸がぎゅっとした。
いつも隣にいてくれて、穏やかな微笑みを向けてくれて、そっと私を支えてくれる陽だまりみたいな彼。
感謝の気持ちを込めた贈り物をあげたくて、うんうん唸っていると、額に何かが押し付けられた。
思わず顔を上げると、両手一杯のパンを抱えた火神がメロンパンを私によこした。
「火神…これくれるの?」
「唸ってるから、腹でも減ってんのかと思って。」
「違うよ。もうすぐテツくん誕生日なんだけど、何あげたらいいのかなって…。」
ちゃっかりメロンパンにかぶりつき、火神の答えを待つ。
ちなみにテツくんは図書委員のお昼当番でいないから、今がチャンス。
「…あいつ甘いもん好きだろ。お前今まで手作りの菓子とかあげたことあんのか?」
「…ない。だって私致命的に不器用だし、そんな恐ろしいこと…。」
「それをあいつのために挑戦してやったらいいんじゃねぇの?」
確かに。
バカガミのくせに良いこと言ってくれるじゃない。
(口に出したら怒られるから、心の中に収めておこう。)
「…そうだね!私頑張る!」