第15章 愛しい黒猫に翻弄される*花宮*
…本当に自分勝手なんだから。
でもそれを許してしまうあたり、私も大概真に甘い。
また定位置のソファーに戻って、お菓子に手を伸ばした。
私が美味しいって言った期間限定のチョコレート。
甘さ控えめだけれど、甘いものが苦手な真が自分でわざわざ買って食べるはずがない。
「。」
またパソコンの画面を見たまま、真が私の名前を呼んだ。
「ん?」
「…もう少しで終わる。」
待たせてること悪いと思ってくれたのかな?
私を気遣ってくれる行動や、ちょっとした言葉が現れるようになったのは進歩だ。
その言葉に私はついつい口許を緩めてしまう。
「…待ってる。」
それから間もなくして、ぴたりとキーボードの音が止まった。
真の方を見ると、パソコンの画面は暗くなっていて、ようやく真が席を立った。
私の隣に真が座り、雑誌を読む私のに頭をもたせかけてきた。
「もういいの?」
「…とりあえず終わった。疲れた……。」
あれだけ私が構ってほしい時は放っておいたくせに、自分が構ってほしい時はお構い無し。
「もう…。」と少し溢してしまったけれど、やっぱり真を感じると幸せだなと思ってしまう。
このまったりした雰囲気に委せて、さっきのことを尋ねてみた。
「…何で私が出掛けようとした時呼び止めたの?寂しかったから?」
真は視線を落としたまま、そっと私の手を握った。
「…そういう事聞くな。お前はいても邪魔にならないからだ。」
自分勝手だし、愛想も良くないし、甘い言葉なんてくれない。
それでもちゃんと私を必要としてくれていて、気紛れに私に甘えてくれる。
猫みたいな彼は、どうにも私を惹き付ける。
「真って黒猫っぽいよね。」
「はぁ!?」