第12章 同じ目線で*黒子*
元々周りの女の子たちよりも一段階高い身長は、私にとってずっとコンプレックスだった。
いつも背の順は一番後ろで、小学校の時は隣の男の子よりも背が高かった。
中学生の時好きになった男の子がクラスメイトに言った言葉が今でも時折脳裏を過る。
「お前と仲いいじゃん。付き合ってんの?」
「?あいついいやつだけど、女じゃねぇよな。俺と身長変わらないし。」
それは私の片想いが終わりを告げるほどショックで、しばらく立ち直れなかった。
高校に入って、バスケ部でテツくんに出会って、優しさに触れて、傷が残っていた心を柔らかく包み込まれたみたいだった。
特別な感情を持ったことにはすぐ気付いたけど、でもまた傷付きたくなくて、ただひっそりと好きでいようと誓っていたら、まさかのテツくんからの「好きです」だった。
嬉しくて幸せだったけれど、自分のコンプレックスに全く触れられないことは恐怖でもあった。
内心あの人みたいに女の子が背が高いのはどうなのって思ってるんじゃないかって。
「…。」
つんつん、と頬をつつかれて、私は意識を元に戻した。
「どうしたんですか?浮かない顔をしていますけど…。」
部活はとうに終わっていて、今は二人並んで歩く帰り道だった。
私の顔を心配そうに覗き込むテツくんと視線が重なった。
不安げなその表情を自分がさせているのかと思うと、胸がぎゅうっと苦しくなった。
このまま一人で悩んで、またテツくんにこんな顔をさせたくない。
私は足をピタリと止めて、思い切って切り出してみることにした。
「…テツくんは私の身長気になる?」