第12章 同じ目線で*黒子*
テツくんが足を止めて一歩後ろにいる私の方に振り返った。
「…今日のことやっぱり気にしていたんですね。」
「だって女の子って小さい方が可愛いって言うでしょ?私とテツくん身長同じだし…どう思ってるのかなって。」
テツくんのことだから、傷つけるような言葉は言わない。
けれど嘘や冗談も言わないから、そのストレートな思いを受け止められるのか少し不安だった。
「…馬鹿ですね。」
一つ吐いた溜め息がふわりと白く浮き上がり、テツくんは私の頭をそっと撫でた。
「じゃあは周りの方より背が低い僕のことを好きじゃないんですか?」
「そんなわけない!…好きだよ。」
首を横に振って想いを告げれば、テツくんは頭を撫でていた手を今度は頬に添えた。
「それと一緒です。僕は身長もひっくるめて君のことが好きなんですよ?」
どうしてこんなに優しい言葉をかけてくれるんだろう。
じわじわ込み上げてくる気持ちを抑えられなくて、目に熱い涙が滲んだ。
目尻に溜まった滴をテツくんが指で掬い取ってくれた。
「確かに身長差は気になることもたまにあります。でも、一つ気付いたことがあるんです。」
「何?」
テツくんの手が私の両肩に乗せられて、優しく唇が寄せられた。
唇が離れると、少し悪戯っぽく微笑むテツくんの綺麗な顔が目に飛び込んだ。
「すぐにキス出来るんです。」
「……っ!!」
不意打ちに驚いて、軽く拳でテツくんの肩を叩いた。
するとその手首を掴まれて、また二人の手が繋がれた。
「。目線が同じだと見上げたり屈んだりせず、無理なく目を合わせられると思うんです。僕は同じ目線で、同じ未来を君と一緒に向いていたいです。」
「何かちょっとプロポーズみたいだよ?」
「そう捉えてもらっても構いませんよ?」
テツくんの嘘のない真っ直ぐな言葉に、私の背筋がシャンと伸びた。
長年のコンプレックスは好きな人が認めてくれただけで、綺麗に消えて無くなった。
これからも隣で背伸びせずに微笑んでいられますように。