第8章 甘いあなたの味*黒子*
テツくんに元気を出してもらいたくて、帰りにマジバに寄ったけれど、賑やかなその空気は何となく今の気持ちに合わなくて。
テツくんが頼んだバニラシェイクと、私が頼んだアップルパイをテイクアウトして、飲みながら帰ることにした。
「テツくん、シェイク寒くない?」
「手袋してるので、手は冷たくないですよ?少し寒いですけど、やっぱり好きなんです。」
ストローでちびちびとシェイクを飲むテツくんは何だか可愛い。
その様子が微笑ましくてちらちら視線を移していると、私はテツくんの口許に注目している自分に気付いた。
…私、こんな時まで無意識に見ちゃうなんて。
自己嫌悪に陥っていると、視線に気付いたテツくんが首を傾げて私を見つめていた。
「…飲みたいんですか?」
「あっ…!う、うん!頂きます…。」
邪な気持ちに気付かれたくなくて、思わずシェイクを頂いた。
…あ、間接キス。
嬉しいんだけどね。
「違う…。」
「何が違うんですか?」
しまった!
無意識に心の声が口から溢れてしまった。
慌ててごまかして、その場を取り繕うとした。
「えっ!?私何も言ってないよ?」
「…どうして僕には何も言ってくれないんですか?」
急に腕を掴まれて引き寄せられ、その拍子でテツくんに抱き留められた。
腕が私の腰に回り、テツくんの暖かさを感じる。
どうしよう。
私抱き締められてる。