第8章 甘いあなたの味*黒子*
「テツくん…?」
「最近が何か考え込んでいるのは気付いていました。ただ、僕には何も言わないで火神くんに相談しているのは辛いです。」
そうか、あの時テツくんが少し寂しそうに見えたのはそういうことだったんだ。
でもね。
キスしたいなんて、やっぱり恥ずかしくて言えないよ。
言葉を返せなくて、目を合わせられずに俯いていると、するりとテツくんの腕が身体からほどけた。
「もっと頼ってください。の彼氏は僕でしょう?」
頬に手が添えられて、テツくんの顔が近付いて唇が重なった。
ちゅ、と音を立てて唇が離れたかと思えば、また距離が縮まり温もりが触れた。
キスをする意味、やっとわかった。
「好きだよ」を言葉以外に伝える方法。
何度も何度も繰り返される度に、私のことを想ってくれる気持ちが伝わった。
口付けを終え、息をついてうるさく響く鼓動を落ち着かせた。
「…テツくん、私こうしてほしかった。恥ずかしくて言えなかっただけなんだ。」
ずっともやもやさせていた胸の内を伝えれば、テツくんはふわりと私が大好きなあの笑顔を浮かべた。
「…そうだったんですね。安心してください。僕も同じ気持ちでしたから。」
「え?」
「初めてキスをした時、があまりに唖然としていたので、もしかしたら嫌だったのかなって思ったんです。それで躊躇っていました。」
「嫌なわけない…。あの時はびっくりしただけ!今すごく幸せな気分だよ?」
そう言うと、テツくんはまた一つキスを落とした。
「…それなら、これからたくさんキスしないといけませんね。」
前より少し大人びて見えたテツくんの表情に胸がとくんと音を立てた。
ずっと待ち望んでいた二回目のキスはほんのりバニラの味がした。
甘いあなたの味に、私は胸がいっぱい幸せで満たされる。