第50章 眠り姫がくれた奇跡*高尾*
カーテンを開けると、ベッドが少し起こされていて、俺の姿を見て驚いたのか目を丸くした彼女がいた。
いても立ってもいられなくて、ぎゅうっと横たわる彼女を抱き締めた。
「ちゃん、おはよう。」
「…おはよう。起きるの遅すぎたね。…ごめんなさい。」
腕を緩めて久々のちゃんの顔をじっと覗き込んだ。
「そんなんいーよ。ちゃんとまた会えたんだから。…てか、今日を選んでくれたんじゃねぇの?」
「え?」
きょとんとする彼女に一つヒントをあげることにした。
「今日、11月21日。」
「…あ!…お誕生日おめでとう、だね!」
「ありがと。最高のプレゼントだわ。」
「…身体がまた本調子になったら改めてお祝いするから。」
「別にいいって。…じゃあ、久々にちゃんからキスして。俺、寝てる時めっちゃしたから。」
ちゃんは少し眉を寄せて頷いて、俺の胸に手をついて、柔らかな唇を重ねてくれた。
また視界に彼女の顔が映れば、そこには照れくさそうに、でも嬉しそうに微笑む彼女がいた。
ふと、彼女の目尻がほんのり赤くなっていることに気が付いた。
「…あれ?何か目、赤くね?」
「それは…和くんが書いてくれてたノート読んでたら、つい…。特にこのページとか…。」
ペラペラとノートを捲ってみせる彼女の手を制して、ノートを奪い取った。
「…ちゃん、俺の目の前で見せるの止めて!心の中に仕舞っといて!」
「わかったわかった。」
クスクス無邪気に笑う顔も本当に久しぶりで。
やっと、やっと会えた。