第50章 眠り姫がくれた奇跡*高尾*
11月21日。
授業後に携帯を見たら、着信履歴が残っていた。
「ちゃんのお母さん」
まさか、と思って、すぐに教室を出て電話を掛け直した。
緊張しながら待っていると、ちゃんのお母さんの声が聞こえてきた。
電話が終わり、何故だか身体が動かなくて固まっていると、後ろから名前を呼ばれた。
「真ちゃん…。」
「か?どうだったのだよ。」
「目、覚ましたって…。」
「…早く行くのだよ。立ち尽くしている場合ではないだろう。」
「…真ちゃん、部活休むって言っておいて!」
ようやく現実を受け止めて足が動き出した。
気付けばチャリ置き場に着いていて、また気付けば病院が目の前に広がっていた。
病室へと足を急がせると、部屋の前にちゃんのお母さんが立っていた。
「連絡ありがとうございました。ちゃんは中ですか?」
お母さんはこくりと頷いて穏やかな笑みを浮かべていた。
「待ってるから行ってあげて。」
すぅっと深呼吸をして、病室の中へ足を踏み入れた。
閉められたカーテンの前で、恐る恐る名前を呼んでみた。
「…ちゃん。」
すると聞き馴染みのある声が、ようやく耳に届いた。
「…はい。」