第49章 あなたが選んでくれたから*黄瀬*
翌日、お昼過ぎに駅前で待ち合わせ。
肌を刺すような日射しに、思わず日陰を探してスタンバイした。
「っち、お待たせ!」
声が聞こえて顔を上げると、部活終わりとは思えないほど爽やかな笑顔で涼太が駆けて来た。
「涼太、部活お疲れ様。ご飯食べた?」
「大丈夫っスよ。一回帰った時に軽く食べたから。じゃ、行こっか。」
そう言って慣れた仕草で指を絡ませて手を繋いだ。
何度もこうしているのに、やっぱり嬉しくてくすぐったいのはどうしてだろう。
「っち、何だか嬉しそうっスね。」
「うそ、そんなにニヤニヤしてた?」
「ニコニコかな?っち笑っててくれてると俺も嬉しいっス。」
ちょっと気恥ずかしくて、涼太と目を合わせられなくなってしまったけれど、「嬉しい」って伝えるかのように繋がる指先に力を込めた。
ショッピングセンターの水着売り場に行くと、穴場だったのかあまり人はいなかった。
「っち、何色が好きっスか?」
「うーん…ピンクとか水色とかかな。」
「じゃあ…」
涼太は私の手を引いて水着コーナーをぐるりと見渡して、手早く何着か手に取った。
「こんなのどうっスか?」
小花柄だったり、水彩画みたいな色合いだったり、水玉だったり…可愛らしい物ばかり選んできてくれた。
「あ、可愛いね!どれも良いから悩むなぁ…。」
「じゃあ試着してみたら?」
「試着」という禁断の言葉が出た瞬間、一気に身体が固まった。
「え!でも…ちょっと見せられるもんじゃないんだけど…。」
「っちだったら、どんなもんでもいいっス。はい!行ってらっしゃい!」
笑顔で背中を押されてしまっては、断ることなんて出来なくてそのまま試着室に入り込んでしまった。
二人で迎える初めての夏。
水着なんて肌の露出が多いものを着てみせることは、私にとってかなりの冒険だった。
ふぅっと一つ息をついて、試着室のカーテンを開けた。