第49章 あなたが選んでくれたから*黄瀬*
「どう…?」
カーテンの外にいた涼太は私の問いかけに答えず、数秒時間が止まっているかのようだった。
やっぱりそんなにスタイル良くないし、幻滅してフリーズしてるのかな…。
「あの…」
「っち、めっちゃ可愛いっス!ごめん!びっくりし過ぎて声出なかった!」
私の声に被せるかのように、涼太は瞳を輝かせて興奮して答えてくれた。
女の子というのは実に単純で、好きな人に「可愛い」って言ってもらえば自信を持てるもの。
その後も選んでもらった水着を試着して、結局お互いに「これだね!」と一致した水彩画のような色合いの水着を選んだ。
買い物を終えて、休憩と久々のお喋りがてらカフェでお茶をすることにした。
「涼太、連れてきてくれてありがとうね。お陰で可愛いやつ買えた。」
「俺から誘ったし気にしなくていいっスよ。女の子が可愛くなるのは、こっちも嬉しいしね。」
この人は…そんな綺麗な顔でにっこり微笑まれちゃうと、ドキドキしちゃうんだけど。
「スタイリストさんみたいだね。」
「本当っスか?じゃあ将来はバスケ選手兼モデル兼スタイリストでもいいかも。」
「欲張り。」
でも何でもこなせる涼太なら、その夢を全部現実に出来てしまいそう。
この先も隣で涼太の未来を見ていたいな。
あ、でも陰から支えていた方がいいのかな。
涼太のこと好きな女の子たちはたくさんいるから。
「ねぇ、っち。」
「何?」
「今度、今日の水着で俺ともプール行こう!」
「いいけど…人多いから目立っちゃわない?」
モデルとしての人気も上々だから、プールなんて人が集まるところは避けた方がいいのかもしれない。
だから自分からは切り出せなかった。
「そんなに気にしないっス!俺もっちと夏っぽいデートしたいんスよ。穴場のところ探すから!」
やや前のめりになって熱弁する姿を見ていたら、どれほど真剣になってくれているかが伝わってきた。
楽しい時間を二人で過ごしたい、という想いは一方通行ではなかった。
「うん!じゃあ約束。」
嬉しそうに口元を緩めながら、スマホでスケジュール確認する姿を見つめながら思う。
二人でいる時は独り占めしてもいいよね?
だって私の瞳に映る彼も、きっと彼を見つめる私も幸せそうに見えるから。
だって貴方が選んでくれたんだから。