第42章 太陽と月*小金井*
図書館で待っていると、バタバタと大きな足音が近づいてきた。
「、お待たせー!ごめんね!」
「お疲れ様。そんなに慌てて来なくても大丈夫だったのに。」
「何言ってるの!早く会いたいんだから走ってくるのは当然でしょ?」
真っ直ぐな気持ちが心にすっと響いてくる。
慎二はそっと私の手を握って、そのままゆっくりと二人並んで歩き始めた。
「今日さ、練習の時にシュートめっちゃ決まってさ!それで…」
毎日部活の時はどんな話題でも一生懸命に話す姿を見ると、本当に楽しくて仕方ないんだなって伝わってくる。
慎二がたくさん話してくれるから、口下手な私にとっては本当に有り難い。
慎二が嬉しそうだと、私も一緒に嬉しくなる。
ただ、いつも思うのはもっと上手く相槌が打てたらな、とか。
慎二みたいに表情がくるくる変わったらな、とか。
話しててつまらないって思われているかも、なんて心の隅っこでそんな考えが過る。
「?どしたの?」
むにっと軽くほっぺたをつねられたかと思えば、かなりの至近距離に慎二の顔があった。
「…ううん、何でもないの。」
首を横に振って、口元に薄く笑みを作ってみたけれど、慎二はまだ眉間にシワを寄せている。
「嘘つかないの!の顔見れば何でもなくないことくらい、俺だってわかるよ。…それとも俺には話せない?」
その言葉にはっとして、慎二の表情を窺うと、眉を下げて瞳は少し揺らいでいた。
…私がこんな顔させてしまってるんだ。
だめだ。
口下手なんて言い訳にしないで、ちゃんと言葉にして届けよう。