第32章 空色に映る桜*黒子*
学校に着くと優しく花開く桜の木が出迎えてくれた。
「桜綺麗だね…。」
「は昨日もそう言ってましたね。」
「だって私桜が一番好きなんだから仕方ないよ。」
風がふわりと吹けば、木からはらはらと桜の花びらが舞い踊った。
思わず立ち止まって眺めていると、少し寂しげな声が隣から聞こえてきた。
「…去年この場所でこの桜を見た時、正直に言えば清々しい気持ちではなかったです。」
はっとして、テツくんの方に視線を向けると表情が僅かに曇っていた。
そうだ。
去年入学した時は、つまり中学を卒業した直後。
WCの決勝の前にテツくんが皆に告げた話を思い出した。
悲しくて辛い思いをして、その傷を抱えてここに来たのだから。
テツくんの心境を考えると、私まで涙が溢れそうになってしまった。
すると、テツくんの手が私の頬にそっと触れた。
「、そんなに悲しそうな顔をしないでください。…最後まで聞いてもらえますか?」
「うん…。」