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黒子のバスケ*Short Stories3

第28章 次の春こそ貴方の元へ*今吉*


私の呟きを彼は聞き逃さず、本を閉じて視線を私に移した。

「浪人?何でや。」

「…勉強してもしても結果がついてこないですもん。ごめんなさい…。」

自分で決めたんだから、弱音は吐かないで頑張ろうって誓っていたのに。

一度崩れてしまえば心は脆くて、目頭がじわりと熱くなった。

彼の卒業を見送ってから、行くのが楽しみで仕方なかった学校も、彼と出会う前のようにただの日常生活へと戻ってしまった。

だから目指す学部は違っても、同じ大学に通いたい!と強く思った。

勿論賢い彼が通う大学は、私にとっては背伸びしてようやく触れられるレベル。

担任の先生も私の熱意で受験を許可してくれたけれど、いつも面談の度に不安そうな表情を浮かべていた。

涙が溢れないように、ぐっと唇を噛み締めて、込み上げてくるものが落ち着くまで堪えていた。

聡明で、それでいて努力家な彼はこんな風に弱音を吐くことを許さないと思うから。

彼が何も言わないで私に視線を向けているのを感じる。

何とか顔を上げて、一瞬だけ彼を見てからすぐ視線を逸らして口を開いた。

「ごめんなさいっ!…続けますね。」

そうしてまたシャープペンを握り、勉強モードに入ろうとした時、頭にそっと手が置かれた。
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