第28章 次の春こそ貴方の元へ*今吉*
想像とは裏腹な優しく頭を撫でる手つきに驚いて顔を上げた。
「なぁ…自分だけやと思ってへん?」
「え?」
「同じ学校通いたいって思ってるのはワシかて一緒や。見込みなければさすがに止めるで?」
置いていかれて寂しいのは自分だけだと思っていた。
いつもどこか彼を追いかけてばかりな気がしていたけれど、彼も同じように願っていてくれた。
今の一言だけで、沈んだ心とモチベーションはまた上がり始めた。
「…本当ですか?」
「嘘ついてどないすんねん。…なら受かるで。ワシがついとるから、安心して頑張り。」
何故だか彼の言葉は現実になる気がしてしまう。
加えてそんなこと言われてしまえば、もう頑張るしかないでしょう。
だって紛れもなく彼の笑顔は優しかったから。
「…はい!」
今日一番の明るい返事に、彼は満足そうにもう一度私の頭をくしゃりと撫でた。
「頑張ってもらわな困るわ。…やっぱ毎日の顔見とらんと寂しいねん。」
「寂しい」だなんて、彼の口から一生聞けると思っていなくて。
急に真っ赤になった私の顔を見て、彼はからかうように笑っている。
見ててくださいね。
余裕で合格して、今度は私がびっくりする先輩を笑っちゃいますから。