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黒子のバスケ*Short Stories3

第27章 小さな箱に大きな想い*日向*


目的のオイスターバーは平日の夜にも関わらず、少しだけ待つほど賑わっていた。

案内された席は窓際で、繁華街の夜景がよく見えた。

ビールで乾杯して、次々とテーブルに並ぶ美味しそうな料理に瞳が輝いた。

どれを食べても口に入れた瞬間、お互い顔を見合わせて目を見開いて同じ一言を口にした。

「うまい!」

食べ物の好みが似てると、こうやって同じ嬉しさを共感できるのがいい。

美味しい料理に、美味しいお酒。

目の前の彼はスーツを着こなしていて、出会ったばかりのあどけなさはすっかり見えなくなっていた。

自覚はないけど、私もその分大人になっているんだろう。

今年こそは、と願っていることが起こらないか心のどこかで期待している。

「、どうした?」

夜景を見ながら少しぼんやりしていたようで、彼に呼び掛けられて気がついた。

「…なんか幸せだなぁって思って。」

気付けば目頭が熱くなり、じわりと涙が浮かんだ。

「一緒に飯食うだけで泣きそうってお前どれだけ単純なんだよ。」

「…うるさいなぁ。」

幸せだって思っているのは嘘じゃない。

だけど気持ちの焦りから込み上げてくるものが涙に変わったという方が本当だ。

「俺、今日お前の家泊まろうと思うんだけどいいか?」

「え?でも順平も明日仕事でしょ?ここからだと順平の家の方が近いし、帰った方がいいんじゃない?」

「いいんだよ。俺がそうしたいの。」

誕生日だから一緒にいてくれようとしてるのかな?

ここは折角の厚意なので、お言葉に甘えることにした。
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