第27章 小さな箱に大きな想い*日向*
家に着くと、彼はベッドに腰掛けて一息着いてネクタイを緩めた。
私は朝干しておいた洗濯物を取り込んで、その中にあった彼のパジャマを手渡した。
「何か手伝うことあるか?」
「大丈夫だよ。…着替えないの?」
「一通メール返したらな。」
ある程度片して、お風呂の用意でもしようかなと思い立ち上がると、彼が私の手を握った。
すると、腕が背中に回りそっと抱き寄せられた。
嬉しくて私も腕を回して、その温もりを味わっていると彼の声が聞こえてきた。
「誕生日プレゼント欲しいか?」
「…欲しいっ!」
プレゼントをちゃんと用意していてくれたことにびっくりして、少し返事が遅れてしまった。
彼は私をベッドに腰掛けさせて鞄の中をがさがさと探り始めた。
その手に握られているものが目に入った時、まさか…と信じられなかった。
彼の手の中の小さな箱が開くと同時に、私の目からは大粒の涙がこぼれ落ちた。
「、結婚しよう。」
箱の中には一粒キラキラと光輝く石がついた指輪。
嬉しくて泣きじゃくる私の手を彼はとり、指輪を左手の薬指にはめてくれた。
「ピッタリだよ…。何でサイズ知ってるの…?」
「ダアホ。…それくらい覚えてるっつーの。」
涙で滲む目で眺めても、はっきり見える。
キラキラと光を集めているエンゲージリング。
彼は私の涙を指で拭って、クリアになった私の瞳を捉えた。
「…結婚してくれるか?」
「する!…するに決まってるよ!」
その言葉を交わすと、また想いが込み上げて涙が溢れた。
自分がこんなに嬉しくて泣けるなんて知らなかった。
それほどまでに待ちわびていて、ずっと願っていたのは彼からのプロポーズ。
なんて最高のサプライズなんだろう。
「お前、顔ぐしゃぐしゃ。」
「…しょうがないでしょ。化粧落ちちゃった…。」
お湯で落とせるマスカラも、涙の暖かさですっかり目から取れてしまった。
「…世話焼けるな、全く。」
彼はティッシュで私の顔をきれいに拭って、もう一度優しく抱き締めてくれた。
「…結婚するんだね。」
「お前泣きすぎだろ…。」
「だってずっと待ってたんだから…。」
視線が重なってお互いを確かめるキスをして微笑みあった。
目の前の彼は、私の旦那様になる。
泣き虫で可愛くない時もある私だけど、これからもずっとずっと宜しくね。
