第26章 恋人初心者*日向*
伊月くんの言葉ではっとした。
そうだ、私も順平に思ったこと伝えていない。
「友達」だった時の彼しか想像できていなかった。
私が付き合い始めてから、もっと側にいたくなったように、順平も同じことを思っているかもしれない。
そう気付いたら今すぐにでも順平と話したくなって、バスケ部の練習が終わるのを待つことにした。
終わる頃を見計らって体育館を覗けば数人が自主練をしていた。
その中でゴールに向かってシュートする順平の姿が見えた。
私に気付いた伊月くんに手招きされたので、靴を脱いで足音を抑えて順平の後ろに立った。
「練習お疲れ様。」
声をかけると、順平が後ろを振り向き目を丸くした。
「うわっ!!?…お前何でこんな時間にいるんだよ。」
「順平待ってた。たまには一緒に帰りたくて。」
「…すぐ着替えてくるから部室の前で待ってろ!おい、後頼むわ!」
素直に思っていることを伝えようと意識して話すと、順平は顔を赤くして足早に体育館を去っていった。