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黒子のバスケ*Short Stories3

第25章 文字に想いを託して*笠松*


振り向けばそこには息を切らしてうっすら汗を滲ませた笠松先輩がいた。

「へ…?先輩?」

「…へ、じゃねぇよ。…これ。」

先輩の手の中にあったのは、私が下駄箱に託したダークブラウンの箱と気持ちを綴った手紙だった。

「あ…あの、それは……」

まさか先輩が追いかけてくるなんて想像していなかったので、しどろもどろになってしまった。

何で追いかけてきたの?

まさか私のこと好きとか?

いやいや、迷惑だったから怒られるとか?

期待と不安に押し潰されそうになっていると、笠松先輩が私から目線を逸らしたまま口を開いた。

「…俺だって同じだった。」

「…?何がですか?」

言葉の意味がわからなくて首を傾げると、先輩は頭をがしがしと掻き、今度は私としっかり目を合わせて言った。

その言葉はもうすぐ出来てしまうはずだった私と先輩との距離を、どんどん溶かしていった。

涙がぽろぽろと溢れてしまう。

先輩は私の涙を少し強く指で拭ってくれた。

「泣くなって…。」

「ごめんなさい…。」

「…謝んな。」

呼吸を整えようとする私の頭を、先輩がぎこちなく優しく撫でてくれた。

たまに先輩がこうして頭に触れてくれるのが、私は密かに好きだった。

撫でてもらうと次第に気持ちは落ち着いて、ようやく先輩の瞳を見つめることが出来た。

「先輩…もう一回さっきの言ってください。」

「言えるかバカ!…ほら、帰るぞ。送ってくから。」

私よりも大きくてごつごつした手を差し伸べられて、そっと握れば離れていた距離は無くなった。

先輩と後輩、マネージャーと部長、そんな肩書きが無くなっても、これからはずっと側にいられる。

先輩の彼女になりました。

隣で顔を少し赤くした彼の横顔を見ながら、さっきの言葉を思い出して幸せを噛み締めた。

「お前が好きだ。…俺もお前の隣にいられて嬉しかった。」
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