第23章 バレンタインイブは「おめでとう」*森山*
アメリカンな雰囲気のカフェで、私はこっそりケーキを出してもらうようにお願いをしていた。
お店の照明が落ちて、バースデーソングが流れた瞬間、彼のところにスポットライトが当たった。
そう。今日は彼の18回目の誕生日だった。
彼は切れ長の目をパチパチさせてびっくりしてくれた。
「…え?、お願いしてくれてたのか?」
「うん。…由孝、お誕生日おめでとう!」
他のお客さんからも拍手をもらって、彼は照れくさそうだったけれどすごく喜んでくれていた。
プレゼントしたマフラーもすぐに巻いて見せてくれて、すぐに自分が使っていたものから私があげたものに変えてくれた。
別れ際にぎゅっと抱き締められて、お互いどちらともなくキスをした。
唇が離れると、彼は耳元でこそりと囁いた。
「、ありがとう。…一番幸せな誕生日だった。」
細身に見えてバスケで鍛えられているしっかりした腕の感触。
顔の冷たさに反比例した唇の温もり。
一番近いところで聞こえた優しい声。
思い出せば出すほど、また私の鼓動は速くなる。
別れたばかりなのに、また会いたくなってしまう。