第19章 好きな人がくれた「好き」*実渕*
人混みでぶつかりそうになった時、玲央先輩が私の肩を自分の方へと寄せてくれた。
「結構人が増えてきたわね…。目星をつけたものを買って帰りましょうか。」
「そうですね…。」
ちょっと名残惜しくて項垂れていた時に、一つのチョコレートが目に飛び込んできた。
「うわぁ…!可愛い!」
そこに飾られていたのは、まるでフルーツタルトのようなチョコレート。
チョコレートのコーンフレークのカップに色とりどりのチョコレートとその色に合うドライフルーツがあしらわれていた。
「…素敵ね。すごく手が込んでいるわ。」
他にはないそのチョコレートがとても可愛くて、思わず時間を忘れて見惚れてしまった。
買おうかどうか本気で悩んでいると、隣からの視線に気が付いた。
「玲央先輩すみません!つい…。」
「いいのよ。ちゃんが楽しんでくれているなら。…そうだ!少しお茶して帰りましょう。」
「…はい!」
カフェで冷たい飲み物を頼んで、人混みの暑さで渇いてしまった喉を潤した。
「玲央先輩、付き合ってくださってありがとうございました!御礼も兼ねて、玲央先輩には奮発しないとですね。」
「そんなに気を遣わなくていいわよ。私もさすがに男一人であの場所には行けないから、ちゃんと一緒に来られて楽しかったんだから。」
すると携帯が鳴って玲央先輩は電話のために席を立った。
後ろ姿を見送りながらふと思う。
いつも優しくて気配り上手で素敵な玲央先輩。
バレンタインに告白したらどうなるのかな?
…焦っちゃダメな気がする。
でも、優しくされればされるほど好きになって、もっともっとって欲張りになってしまう。
「ちゃん、ごめんなさいね。お待たせ。」
玲央先輩の声でぐるぐる巡る思いからまた現実に戻った。
私の家まで送ってくれるということで、まだ寮の門限まで時間はあるけれど家路につくことになった。