第1章 救済【サンカク。‐case1‐】
幼馴染みじゃなく友人と言って、例え話にして、一応は私に気を遣ってくれている。
それなら、気付いていないフリをしないと。
赤葦くんに、すでに彼女が居るって事実を知らない顔をしないと。
そう思っていても、手が震えていた。
「…返事が、保留だった場合は?」
赤葦くんの声が聞こえて、震えが止まる。
まだ付き合っていないらしい事を知れたからじゃなくて、驚いたからだ。
「…え?オッケー貰ってるんじゃないの?だって、さくらちゃんって赤葦くんを…あ。」
つい、口から本音が零れ掛ける。
途中で止めても、名前を出してしまったから、赤葦くんに睨まれた。
「別に、さくらと俺の事だなんて言った覚えないんだけど?なんで、そう思った?」
無回答は、許されない。
赤葦くんは、そういう雰囲気を持っていた。
「…私、最近、さくらちゃんが2年の教室訪ねて来ないのに気付いてるんだよ?
避けられてるって話から始まって、告白したからって話もプラスされたら、分かるに決まってるじゃない。
私は、赤葦くんが思ってる以上に、赤葦くんの事を見てるんだよ。」
2回の告白。
両方とも、好きな人がいる、ってフラれた。
その好きな人が誰か、もう知っている。
そう含ませて、正直に答えた。