第2章 ※救済【サンカク。‐case3‐】※
こういうのは、男の人が素直に言ってくる事じゃないと分かっての質問。
「そんなワケないだろ!別に俺は1人でもヘーキだ!」
案の定、否定して返してきた。
それはそれで好都合。
合鍵を受け取らない理由に出来る。
「1人で平気なら、私が一緒に暮らしたりする必要ないんじゃない?」
「でも、たまに遊びに来るくらいいーじゃんか。」
「それ、合鍵貰ってまでする事じゃないよ。たまに遊ぶだけなら、待ち合わせたら良いし。
会って話するくらいなら、ここでも出来るでしょ?」
「じゃあ、約束!毎週金曜はここで俺と飲んで?」
何回も断っているのに、まだ粘ってきた。
代替案を出したら、やっと諦めてくれたようで。
勝手に決まり事を作られたけど、合鍵を受け取るよりは遥かにマシ。
「分かった。約束するよ。」
頷いて了解すると、目の前に差し出された大きな手。
小指が立てられていて、何がしたいのか、すぐに分かる。
「指切り、ね。嘘ついたら針千本だよ?」
約束を破った時の罰。
冗談だと分かるように笑って、小指を絡めた。
それは、数回振っただけですぐに解かれる。
指から伝わる体温が離れていくのは、傷心中の私には、やっぱり淋しく感じた。