第2章 ※救済【サンカク。‐case3‐】※
たまたま居酒屋で居合わせただけの、
ちょっとだけ境遇が似ているだけの、
殆ど赤の他人に近い人間に、合鍵を渡そうとする事自体が宜しくない。
そんな事すら、リエーフは分かっていないようだ。
「…ねぇ、なんで私に鍵をくれようとするの?」
常識を並べ立てても無駄な気がする。
ならば、理由が知りたい。
それによって、断り文句を考えられる。
「ゆえさん、同棲してた男と別れたんだろ?」
リエーフの答えは、人の傷を抉りにきた。
自分からネタにしたり、愚痴るのは良い。
だけど、人に言われるのは腹が立つ面倒臭い女心。
イラついて、グラスに残っていたアルコールを喉に流し込む。
「私が、男と別れたって事と何の関係があるの?」
意識的にゆっくりと、グラスをカウンターに置いたけど、
そうやって落ち着いたフリをしても、グラスを掴んだままの手が震えた。
そんな私の怒りは、リエーフには伝わらず
「家、追い出されたんじゃないのか?」
更に傷口に塩まで塗り込みにくる。
でも、悪気があった訳じゃなかったようで…
「住むとこねーだろ?俺ん家にくればいーじゃん。」
勘違いをした上での、私に鍵を渡す理由を語ってくれた。