第2章 ※救済【サンカク。‐case3‐】※
その翌日も、私はいつもの店に行く。
お持ち帰りされたのに、何もされなかったなんて女としては屈辱的で、それを誰かに聞いて貰いたかった。
そんな話が出来るのが、この店の大将だけっていうのも淋しい話だと、自分でも思う。
仕事とはいえ、毎日こんな愚痴ばっかり聞かされる大将も大変だな。
私の所為だって分かってるけど。
ニコニコ笑って聞いてくれるのは、有難いとしか言いようがない。
いや、何故か今日はニコニコと言うより、ニヤニヤ…の気がする。
その理由が判明したのは、数十分後。
1人で来店したリエーフを、当たり前のように私の隣に案内してくれたからだ。
前々から、失恋を忘れる為には新しい恋を、とか大将からは言われてて。
その相手に、リエーフを任命したらしい。
本人は、それに気付いているのか、いないのか…。
「…手、出して。」
隣に座った途端に、挨拶もなく変な事を言い出した。
意味が分からなすぎて反応に困っていると、強引に捕まれた手。
「プレゼントにはリボンが無いとダメなんだろ?」
そこに握らされたのは、ピンクのリボンが付いた鍵。
満面の笑顔を浮かべるリエーフは、一人で勝手に満足していた。