第2章 ※救済【サンカク。‐case3‐】※
事情を知っている大将が、ティッシュを箱ごと目の前に出してくれる。
それを見た途端、泣いていい気になって、涙が溢れた。
「なんで泣いてんの?」
空いていた筈の、隣の席に気配。
横目でチラりと見ると、大きい方の男が移動してきていた。
自分で言った事が、自分に返ってきちゃって泣いてるなんて言いたくないけど。
会話に割り込んだ上に、勝手に泣き始められたら気になるのは当たり前の話だ。
「…私も、同棲してた男にフラれたばっかだったんだよね。」
婚約云々の話はしない。
空気が読める男なら、さっきの言葉で自滅しただけだって分かってくれる筈だ。
慰めまではしてくれなくても、面倒臭い女なのが分かれば、話し掛けるのを止めてくれる。
「じゃ、良かったじゃん。」
ただ、この男は、空気が読めなかった。
「俺は、さっきお姉さんに言われて、さくらとは基本が合わなかったんだって。運命じゃなかったんだって分かったから、良かったと思ったぞ。
お姉さんも、そう思ってるから言ったんじゃなかったのか?」
でも、ウザいとかは全く思わないばかりか…。
「…そうだね。基本って大事だもの。合わないって知らないまま、本番の結婚しちゃってたら、大変だったかも。」
この底抜けに明るい感じに
すぐにプラス思考に切り替えられる所に。
私は、救われた気がした。