第2章 ※救済【サンカク。‐case3‐】※
そう思ったから、関わらないようにしていたのだけど。
大きな男は注意されても声が大きいままで、全部聞こえてきてしまう。
「だって、さくらが俺を選んだクセに、やっぱ木葉さんのがイイってなっちゃったの、分からなくないですか?」
「いや、分かるだろ。お前が家に入り浸り過ぎて迷惑掛けまくった結果だ。」
「彼女の家って行っても良いもんじゃないんスか?合鍵もくれてたのに、ダメな筈無いでしょ?」
「限度があるんだよ。毎日は非常識だ。だから合鍵返せって話になったんじゃねぇか。」
「でも、結婚したら一緒に暮らすんですよ?だったら、練習みたいで良いじゃないですか!」
「その練習みたいな期間中にダメになるって事は、基本的な生活が合わなかったって事でしょ。」
しかも、話の内容が私には痛すぎる。
だから、つい、口を挟んだ。
ショックでも受けてくれたら、少しでも静かになってくれると思って、わざと攻撃的な言い方をした。
ただ、その言葉は自分に返ってきて深く刺さる。
完全にブーメラン。
基本的な生活が合わなくて、練習どころか本番の結婚直前で、ダメになったのは自分じゃないか。
目頭が熱い。
鼻の奥がツンと痛くなってくる。
涙腺が崩壊する前兆だって分かってる。
人を傷付けるような事を言って自分が泣くなんて出来なくて、必死に涙を耐えた。