第1章 救済【サンカク。‐case1‐】
納得出来ずに彼にまとわりついていた時と、今は状況が違う。
好きな人がいる、っていうのが事実だと分かっている。
だから、苦しくても、辛くても、諦めなくちゃいけない。
これを期に赤葦くんに絡むのは止めたのに、視線はついつい向かってしまって。
それは感じ取っているのか、たまにこっちを向くけど、目が合ったところで何かある訳でもなく。
ただのクラスメイトとして2ヶ月近くを過ごした頃…。
「赤葦くん、ちょっといい?」
クラスメイトって関係に、耐えきれなくて声を掛ける。
「あの、さ。赤葦くんが好きです!お友達になって下さいっ!」
「…は?」
限りなく他人に近い存在で終わりたくない。
そんな気持ちから発した言葉は、わざわざ申し込むような事柄じゃなくて。
赤葦くんも意味が分からないみたいで、1つの音を吐き出して固まっていた。
それで、静まり返ったりしなかったのは、ここが教室だったから。
私の発言を聞いていた人達が笑い出して、からかうように赤葦くんの返事を急かす。
こんな注目を集めて、完全に嫌われたと思ったけど。
「今更それ言う?」
真面目なトーンで返されて、今度は私が固まる番だ。
目の前に、握手を求める形の手が差し出されていた。