第1章 救済【サンカク。‐case1‐】
ゴールデンウィーク明けくらいから、赤葦くんの様子が変だ。
妙に落ち着いていない気がする。
「赤葦くん、何かあった?」
「…いや、別に。」
「別にって顔してないよ。」
「本当に何もないから。」
聞いてみても、誤魔化すばかりの彼の目が、出入り口の方に向いているのに気付いた。
連休もあったし、たった数日の事だけど、あの幼馴染みの彼女が最近来ていない。
もしかして、それを待ってるの?
「あ、さくらちゃん?そういえば、最近見ないね。」
茶化すように言葉にすると、一瞬だけ、寒気がする程の視線が向く。
「さくらとは、何もないよ。」
不機嫌そうな声が、これ以上言うなと語っていた。
何かあったのは分かったけど、私には踏み込まれたくないらしい。
ちょっと雰囲気が怖く感じて、赤葦くんに話し掛けるのを止めた。
だからって、向こうから話し掛けてくれる事は無くて。
気まずくて、何日も近寄らないようにしたけど、やっぱり赤葦くんからは接触して来なかった。
私から、話し掛けなければ会話するつもりすらない。
友人になれたと思っていたのは私だけ。
彼から見たら、私はただのクラスメイトでしか無かった事に気が付いた。