第1章 救済【サンカク。‐case1‐】
足を止める。
赤葦くんも、一歩先で止まって振り返る。
何を言えば良いのかは分からない。
でも、そんな勘違いをされたまま、帰れる訳がない。
「なんで、フラれるって分かってるの?
今日だけ、しつこくしないって言うのは、フラれる人の言葉だよね。」
「大鳥、知り合いの話が、俺の事だって気付いてたよね。
それで、告白を勧めるのは俺が他の子と付き合っても構わないって、事じゃない?」
放った言葉は、相変わらず淡々とした声で打ち返されたけど。
「それが私の愛だよ。好きな人の幸せそうな顔が見れたら、良かったんだもん。」
今回は黙らずに、もう一度打ち返す。
「それは、特定の異性として下心を持った感情じゃ無いからって言ってなかった?」
「愛、の部分はね。そうやってイイヒトの顔してる自分に酔ってたのもあるかな。
でも、赤葦くんに、恋もしてるんだよ。
しっかり、下心もある。」
また返されても、諦めない。
赤葦くんが、ちゃんと受け止めてくれるまで、何回でも打ち返し続けてやろうと思ってたのに。
「…じゃあ、俺と付き合ってくれる?」
真っ向からの直球が飛んできて、受け止め損なったのは、私の方だった。
その言葉が、頭の中に響いて、理解をするまでに数秒かかる。
しかも、理解出来たら出来たで、嬉しいけど、恥ずかしくて、答えに詰まってしまった。