第1章 救済【サンカク。‐case1‐】
傷付いているかどうかなんて、その子本人じゃなきゃ分からないのに、自分で決め付けているだけに思える。
それで何も伝えないでいたら、赤葦くんは気持ちを抱え続けるだけだ。
苦しいけど、言わないと。
言わないで、ただ諦めると、自分の気持ちを知ってすら貰えないから。
それはそれで、きっと辛いから、告白はした方が良いって。
頑張って、震えている唇を開いたのに、声は出なかった。
鼻が詰まって、嗚咽だけが漏れる。
「…今も、傷付けてるんだよね。また、泣かせた。」
今、泣いているのは私だ。
間違っても、知り合いと称されている赤葦くん自身の好きな人ではない。
「こうやって、その知り合い…じゃなくて、俺は…。」
泣いている私相手に、まだ恋愛相談してくる気なんだろうか。
今は、これ以上聞きたくない。
赤葦くんが、自分の事だって認めたから、尚更嫌だ。
赤葦くんに好きな人がいる現実を、もう突き付けられたくない。
「ずっと、好きな人の事…大鳥の事、泣かせるしか出来ないんだろうな。」
ここで、まさかの大逆転が起きた訳なんだけど。
悪い事しか考えていなかった頭では、事態を上手く飲み込めず…。
「…え?」
疑問を表す一文字を吐いて、固まってしまった。