第1章 救済【サンカク。‐case1‐】
それから、数週間の時が流れる。
あれ以来、知り合いの話としての報告も無ければ、赤葦くんから連絡が来る事すらない。
あの電話の時は普通に話せたのに、なんのアクションも無いのは、きっと。
告白が上手くいって、彼女が女友達の存在を嫌がったからだ。
それならそれで構わない。
私は、赤葦くんが幸せなら良いんだ。
自己を犠牲にする事に陶酔して、ひっそりと赤葦くんを眺めるだけで満足だと、自分に言い聞かせ続けていたけど。
赤葦くんは、幸せそうに見えない。
表情にあまり出ないから、分かり辛いだけだと、思い込もうとしたのに…。
放課後になる度に溜め息をしている姿まで見ていると、やっぱり幸せ感があるようには見えなかった。
そればかりが気になって、勉強には手が付けられず。
期末テストでは、赤点を取る大失態をやらかしてしまう。
今回のテストは、気を抜かなければ大丈夫レベルのものだったみたいで。
教科によっては、補習は私一人しかいないような有様だ。
このまま、もし進級出来ないなんて事になれば、クラスメイトどころか、後輩になってしまう。
進級出来ないだけならまだ良いけど、最悪の事態…退学とかになったら、完全に記憶から消し去られる。
それだけは避けるべく、放課後の補習の時は、一心不乱に机に向かっていた。