第1章 救済【サンカク。‐case1‐】
それにしても、赤葦くんの方から電話なんて珍しい。
こんなの、初めてだ。
先に帰ったから、さくらちゃんを困らせて、それに対して怒ってるだけだったら、嬉しくない事なんだけど。
そんな事で、電話なんかしてくる人だったかな。
さくらちゃんが関わると、普段からは考えられない行動を取りそうだから、分からない。
「…赤葦くん、何か用だった?」
黙っていても埒があかないし、嫌な答えが返るとしても聞いてみるしかない。
『あぁ、前から相談していた知り合いの事なんだけど…。』
さくらちゃんの為じゃなかっただけ、マシではある返答だけど。
知り合いイコール赤葦くんだから、また恋愛相談とかされたら、それもそれで辛い話だ。
『また、好きな人が出来たらしいんだ。』
予想は当たってしまって。
相談役として、私を使いたいのが、分かってしまって。
「前の子にフラれて、まだ数ヶ月じゃん。その知り合いは、よっぽど気が多いのね。」
口からは、嫌味な言葉が出ていた。
『そうだね。俺も、そう思うよ。
…本人もそうなんじゃない?告白するつもり、ないらしいから。』
肯定されると、胸が締め付けられる。
自分にとっては、赤葦くんが告白しないのは、都合がいい筈なのに。
涙が出るくらい、苦しくなった。