第1章 救済【サンカク。‐case1‐】
一試合くらいなら。
そう言っておいたお陰で、引き留められる事無く、次の試合が始まる前に帰宅する事が出来る。
用事があるのは嘘だった訳だから、別段やる事は無くて。
悶々と、赤葦くんの事ばかり考えてしまいそうだったから、思考を放棄する為に昼寝をしたのだけど…。
着信音によって、起こされた。
「んー。はぁい、ゆえです。」
半分以上は眠った状態のまま、間延びした声を出す。
誰からの連絡か、確認せずに出たのが、そもそも間違いだったみたいで。
『大鳥、もしかして寝てた?お前の用事って昼寝なんだね。』
聞こえてきた怒りを感じるような声に、一気に覚醒した。
「あ、赤葦くん!え、あれ?試合は?」
『もう終わったよ。今、何時だと思ってる?』
「…あ。」
慌てて確認した時計が示していたのは、この季節ならば夜と言われる時間帯。
かなり長く眠ってしまっていた事だけは分かる。
「…なんか、ごめん。」
『それは、嘘吐いた事に関して?それとも、試合を最後まで見なかった事に関して?』
寝ていたのがバレた気まずさがあって、取り敢えず的に謝ると、問い詰められてしまって。
「両方、悪いと思ってます…。本当に、ごめんなさい。」
また、つまらない意地とか張って言い返したら、今度こそ友人としても終わると思ったから、素直にもう一度謝罪した。