第1章 救済【サンカク。‐case1‐】
ショックすぎて、何も言い返せずにいる内に、会場へと強制連行される。
私の嘘は見抜かれていたみたいだ。
仕方無く、会場に入って観覧席に上がる。
梟谷の応援の人達に混ざっていたさくらちゃんは、私に気付いた途端に満面の笑みで手招きしてきた。
彼女に逆らったら、赤葦くんに嫌われる。
それは、やっぱり嫌で従った。
「用事、大丈夫なんですか?」
「一試合くらいなら、見られそうだから…。」
無邪気に話し掛けられても、素っ気無くしか返せない。
隣に立っても、会話の意志が無いというように、コートを見下ろして、赤葦くんを目で追った。
「…京ちゃん、最近、調子悪そうだったのに、今日は調子どころか機嫌も良いみたいですね。」
それでも、何故か話しかけられたけど、何が言いたいのか、分からない。
赤葦くんの事なら、何でも知ってるし、あの無表情でも自分は分かるって宣戦布告?
いや、じゃあなんで別の男と付き合ってるのよ。
苛々して、何も返さないでいると、さくらちゃんの方も黙った。
笛の音が館内に響いて、試合が始まる。
敵チームに、さくらちゃんの彼氏が居た事には驚いたけど。
当の本人は、彼氏より梟谷をちゃんと応援していて。
たまに、赤葦くんがこっちを向くのは、さくらちゃんの声援に反応してるんだろうなって、どんどん苦しくなっていった。
早く、帰りたい。
そればかりが頭を占めた頃、試合は終了。
梟谷は、全国への切符を手に入れた。