第1章 救済【サンカク。‐case1‐】
赤葦くんと喧嘩をしたのは初めての事。
まぁ、喧嘩というか、私が意地になりすぎただけって感じではあるけど。
自分から謝りに行くのは悔しいし、赤葦くんの方が気にして話し掛けに来てくれないか、なんて淡い期待をしていた。
そんな事、ある訳ないのは、自分が一番分かっていたくせに。
時間が経てば経つ程、こっちからも話しに行く事が出来なくなって、数ヶ月が過ぎた頃…。
私の元に、意外な人物がやってきた。
放課後、帰り支度を済ませて、廊下に出た瞬間の出来事だ。
「あの、すみません。」
声を掛けられて振り返ると、そこには、さくらちゃんが居た。
「あ、赤葦くんなら、もう部活行ったよ?」
このコが、うちのクラスに来る時は、決まって赤葦くんに用事がある時。
学年も違うのに、週1くらいで来るものだから有名で、いきなり赤葦くんの名前を出しても問題ないと思ったのだけど。
微妙な顔をして、首を横に振られてしまった。
「今日は京ちゃんに用事じゃなくて…。あなたに、用があって…。」
「私に?」
意味が分からない。
さくらちゃんが、赤葦くんの所に来ている時に話し掛けたりした事はないから、私達は知人どころか、全くの他人だからだ。
でも、明確に私を呼び止めてきたから、人違いじゃ無さそうだし。
さくらちゃんを、無下に扱ったら、赤葦くんに本格的に嫌われそうだから、話を聞く事にした。
と、言っても、さくらちゃんの用事は大した事じゃなく。
単に春高の予選の応援に来てくれないか、って話だけで。
元から行くつもりだったし、気軽な気持ちで了解した。