第1章 救済【サンカク。‐case1‐】
赤葦くんは、少しだけだけど、気が抜けたように笑っている。
それは、凄く優しい顔だった。
あの一瞬でも2人を見て、幸せそうな空気に安心したんだろうか。
ショックを受けるより、安堵出来るのは、赤葦くんのさくらちゃんに対する感情は恋じゃないから。
どちらかと言うと、愛じゃないかな。
小さい頃から一緒に居る放っておけない幼馴染み。
心配だから、護ってあげたいし、傍に居たい。
きっと、赤葦くんが持っていたのは、こんな家族愛に近いものだったんだ。
「…特定の異性に焦がれるのが、恋。生あるものを慈しむ気持ちが、愛。
よく、恋は下心で、愛は真心って言うじゃない?
その知り合いは、特定の異性として、その友人を下心で見てた訳じゃないんだよ。」
勿論、赤葦くん自身は恋愛のつもりだっただろうし。
家族には、夫婦も含まれるから、恋が全く関係ないとは言えない。
「そのコの事、ただただ、大切だったんだ、きっと。
だから、隣に立つのが自分じゃなくても、幸せな顔をしてくれていたら、納得して諦められるんだよ。」
私が言えるのは、これだけ。
赤葦くんは、驚いたように私を見て。
「…そうかも、知れないね。」
また、優しく笑ってくれた。