第1章 救済【サンカク。‐case1‐】
遊園地は、夏休み中だけあって、想像以上の混み具合で。
寝不足だった私は、すぐに体の調子が悪くなってくる。
赤葦くんとのデートを、早めに切り上げるなんて勿体無い。
その気持ちだけで、精一杯楽しんでいるフリをしていたのだけど。
「大鳥、具合悪いだろ。」
数時間もしない内に、赤葦くんに気付かれてしまった。
大丈夫だと首を振ってみても、嘘だとバレバレみたいで、強引に手を引かれて、日陰になっているベンチに連れていかれる。
「冷たいもの、買ってくるから。」
そこに私を座らせて、赤葦くんは売店のある方に歩いていった。
具合悪いの隠してたのに、気付いてくれて。
こんな気遣いまでしてくれる。
さくらちゃんを諦める為だろうけど、私の事をちゃんと見ようとしてくれてる?
…とか、自分に良いように考えて浮かれ始めた頭は、あっさりと現実に戻った。
タイミングが良いのか悪いのか、目の前を通ったカップルの彼女の方が、さくらちゃんだったから。
瞬間的に、悟る。
今日のデートは、1人で居たくないからでも、私をちゃんと見ようとしてる訳でもない。
1人で来るような場所じゃないから、たまたま連絡した私を連れてきただけ。
別に相手は誰でも良かった。
赤葦くんは、ここに来て、2人の姿を見たかったんだ。
納得して諦める為に、それが必要だと思ったんだろう。
その為に、私は利用されていた。