第1章 救済【サンカク。‐case1‐】
完全に寝不足の状態で朝を迎える。
でも、行かない選択肢はない。
数分でも遅刻したら、黙って帰ってしまいそうだから、早めに家を出た。
待ち合わせ場所、公園の前。
そこに佇む背の高い人影。
顔を見ただけで心臓がドキドキする。
何があっても、一生友達でも、この人の事を諦められないなって、自覚した。
「おはよう、赤葦くん。」
声を掛けると顔がこちらを向いて、会釈が返って。
「じゃあ、行こうか。」
「えっと、どこに?」
行き先も告げずに歩きだす。
当たり前の言葉を放ちながら、横に並んで歩いた。
「…遊園地。」
答えは、意外過ぎる場所。
しかも、定番のデートスポット。
赤葦くん、人混みとか、騒がしい場所は苦手そうなのに、なんでそんな所に行きたがるんだろう。
「…知り合いの、好きな人。今日、初デートなんだよ。」
疑問が顔に出たのか、語られる理由。
その話が、赤葦くんとさくらちゃんの事だって気付いているなら、それで察しろという事らしい。
1人で居ると、余計な事を考えてしまうんだろう。
ただ単に、気を紛らわせる為に、自分もデートみたいな事をしようとしてるんだと、この時は思い込んでいた。