第1章 救済【サンカク。‐case1‐】
今度は、赤葦くんが黙ってしまう。
私の方は急かす事は出来なくて、言葉を待つ事、数分。
『…もう1人の男に持ってかれたよ。』
溜め息混じりの声がした。
「…あ、えっと。その、あの…なんか、ごめん。」
つい、謝ってしまって。
『俺の事じゃないから。謝る必要ないだろ。』
ちょっと、怒られる。
でも、私を構ってくれる程度の余裕はあるみたいで良かった。
それなら、聞いてみたい。
これからの事。
諦めるのか、諦めないのか。
諦めないなら、私にはまだ相談相手としての利用価値がある。
「…赤葦くん、聞いていい?」
『何?』
「その知り合いは、その子の事、諦めるの?」
また、赤葦くんが黙ってしまった。
「あ、いや!そこまで聞いてないなら、言わなくていいから!」
きっと、まだ何も考えてなかったんだ。
他の男に持っていかれたのが、それだけショックだったんだな。
それなら、無理に答えさせるのは酷な事。
考えているだろうから、止めようとしたんだけど。
『…多分、諦めるよ。強引に奪うのは趣味じゃないし、そんな事をして、友人ですら無くなったら困るだろ。』
赤葦くんは、答えてくれた。
彼は、幼馴染みに戻る事を願っている。
それについては、私がアドバイス出来る事なんか無かった。