第1章 救済【サンカク。‐case1‐】
赤葦くんの眼は本気だ。
たまに雑談するような、普通の友人って選択肢はない。
それなら、私が選ぶのは…。
「泣いて迷惑掛けちゃって、ごめんね。勘違いして、感情昂らせちゃうの、悪い癖かも。
その知り合いの話、かなり詳しく話してくれるからさ、本人の事って決め付けちゃったみたい。」
騙され続けて、友達でいる事。
こんなに辛い思いをしても、赤葦くんを諦める事が出来なかった。
「なら、現状維持でいいね。」
相変わらず、赤葦くんは淡々としていて。
この人の感情を私が動かすのは無理なのだと悟った。
苦しくて、やっぱりクラスメイト程度であった方が楽なんじゃないかって考えたけど。
その答えが出る前に、昼休み終了の鐘が鳴って、赤葦くんが席に戻ってしまった。
その後も、話し掛けてくれたと思えば、ほぼ相談事ばかりの日々を過ごして。
気を重くしながらも、それに乗っているのは、クラスメイトに戻る覚悟もないからだと、自分で理解してしまう。
私達の関係は、友情が成立していないから、友達ではない。
だけど、利害関係にある内は、お互いに友人のフリをし続ける。
友人ですらない、私にとっては残酷な関係のまま、夏休みに突入して。
顔を合わせなくて済む期間になって、どこか安堵している自分がいた。