第1章 救済【サンカク。‐case1‐】
聞こえてくるのは、溜め息の音。
滲んだ視界を向けると、赤葦くんが呆れたような顔をしている。
「俺とさくらの事じゃないって、何回言ったら分かる?」
表情は変えずに、往生際の悪い事を言ってきた上に…。
「それに、もしそうだったとしても、相談しても良いって言ったの、大鳥の方だよ。」
私が一方的に悪いのだと言うように、責任転嫁してきた。
「…だって、赤葦くんの事が好きだから。相談事が出来る相手で居たかったんだもん。」
返せたのは、ただの言い訳。
全面的に悪いとは思っていないけど、友達でいる為に、騙されたフリをしてきたのは事実。
今更泣いたりしたら、呆れられるのは当たり前だと思う。
「あぁ、そう。じゃあ、お前が選べるのは2つだよ。
今まで通り、相談役に甘んじるか。
友人も辞めて、ただのクラスメイトに戻るか。」
だからって、こんな選択を迫られると思っていなくて。
「なんで、その2択なの?」
出てきたのは、疑問を返す言葉だけ。
「男女間の友情を否定する訳じゃないけど。大鳥が俺に対して持ってるのは、友人としての感情じゃないから、友情が成立してないんだよ。
それなら、利害関係にあるから他の人よりも会話が出来るって関係でいるしか無いだろ。」
淡々と語られたのは、最初からこうするつもりだったと言わんばかりの、残酷な話だった。