第3章 初の試み。
夢の中に入る準備をしている間、
浩二君は、ずっと何かを考えているようだった。
そして、信じられない事を言い出した。
「あのさぁ。先輩の夢、俺も入られへんやろか?」
…はい?何を言い出すかと思えば…
「えっ?…なんで?…ってゆうか、そんなん
無理やろ…やった事ないやん!!」
ビックリした…どうしたん…浩二君。
「だって、奥村先輩が危ない時に俺も傍に
おってあげたいやん。」
…なんだと??
「やってみようや。ダメ元でもええから…な?」
何が…な?…やねん!!
はあぁ~…。
憧れの先輩は、浩二君にとっても
憧れの先輩でした…なんやな。
「なぁ…頼むわ。この通り。
凛ちゃん。」
…『ちゃん』ってゆった!!
やられた!!不意打ち…。
熱くなる顔を見られないように
手を合わせてお願いポーズの
浩二君を背に、
「…やって…みよか…。」
そう言うだけが精一杯だった。
(ん?)
そんな私達のやり取りを
先輩が微笑みながら見ていた。
…は…恥ずかし。
そして、ほんまに初の試み…
先輩と私と浩二君…三人で輪のように
手を繋ぎ、悪夢の中に意識を落として行った…
「……俺が守ったるからな。」
薄れゆく意識の中で、
浩二君の優しい声が聞こえた気がした。