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大空に浮かぶ月を眺めながらいつも私は想いを馳せる。

第1章 七年前のあの日から。


仕事に来る私に、毎日の日課で萩原と出会す。そして毎回見た目を褒められる。少しでも雰囲気が違うと彼は気付いて口説いてくれるのは嬉しいが、いかんせん手慣れているなという印象に残ってしまった。

「おはよう綱海ちゃん、今日も美人だね?」
「おはよう、萩原くん。私君より年上で警視よ?立場を弁えて敬語を使って頂戴ね?」
「あ、はい。すみませんでした」
「うん、素直で宜しい」

くしゃくしゃと背伸びをして頭を撫でる私に彼、萩原研二はやられ放題である。しかし表情がとろけるように甘く嬉しそうなので止めるつもりはなかったりした。なんというかやらないほうが機嫌が悪かったりするからだ。私にはよく分からないが、その髪が獄寺と似てサラサラなのが悪いと思う。と私は勝手に決定付けていたりした。頭から手を離すと少し残念そうな顔をして微笑む。

「そういえば今日の夜暇です?どこか夕飯とか行きません?勿論俺の奢りでっ!」
「萩原くんがいうと妙にチャラく聞こえるのよね…それとごめんなさい、今日も残業しないといけないからお誘いを丁重に断らせて頂くわ」
「毎日の日課ですけど、俺諦めませんから」
「ふふ、楽しみにしているよ…それじゃあ仕事頑張ってね?爆発物処理班のエースくん?」

大きく広い背中を軽く叩いて、笑って手を振りながら去る私を見つめていた萩原は、廊下のど真ん中で恥ずかしくなり顔を手でおおうとうつむいた。その姿を周りの刑事達は見ていたが、いつも通りの日常なので同情や励ましの言葉を伝えている事を私は知らない。

七年前の11月7日。高層ビルに爆弾が仕掛けられた。幸運だったのか、不運だったのか、私はそのビルに住んでいたりしたのだ。逃げろと伝えて来る爆発物処理班の男に冷ややかな目で睨んだことは懐かしい。なにしろ暑くて動きづらいからという理由でだろう防護服を着ていなかったからだ。こういう無茶な所も獄寺と似ているから余計に被って見えたんだよなー…と思い出す。

「失礼、貴方は爆発物処理班の方ですか?」
「そうですがって、そんな悠長に話している場合じゃ!早く逃げろ!」
「、けんな…」
「はっ…?」
「ふざけんな!アンタ、そんな格好で今からなにするつもりよ!危ない作業だって一番分かっている爆発物処理班の人間がっ!驕るな!自分だけの命を預かるわけじゃない!ここにいる全ての人間の命を預かっているの!」
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