第5章 縁は異なもの味なもの
(これは…間違いなく夢だ)
また柴舟が魅せてくれる夢なんだ、と、二度目ともなると驚きもなく受け入れながら。
ふと見下ろすと、玉のような赤ちゃんを抱いた、美しい女の人の姿。元気に泣き声を上げているのを愛しそうに見つめながら、あやす様に揺すっている――
そして、場面は暗転し切り替わる。
赤ちゃんは少し育って、男の子になっていた。ちょろり、と無理矢理に結ばれた後ろ髪が可愛らしい。彼がふっと空を見上げた時、浮いている私と目線が合った。
案の定私の姿は見えていないようで、その後ろの抜ける様な青空を見ている…意志の強さを感じさせる鋭く蒼い瞳に、もしかして、と思った瞬間、また暗転。
続きを見るのが楽しみになっていた私の目に飛び込んできたのは、思いもよらない光景だった。快活で聡明そうだった先程の男の子は、暗い部屋で膝を抱え蹲っている。
そして、彼がふと泣き濡れた顔を上げた。
まだ小さい顔の、片目のある筈の位置が醜く腫れ上がっている。
思わず、ひゅっと息を呑む。
綺麗な蒼い瞳は、絶望に覆われて…
ぽろりと一粒、彼の頬を涙が伝った所でまた、暗転。
どきどきと、痛い程に鳴っている胸を押さえ、次の場面へと――
次に見たのは、小刀を構える男の人と。
目を閉じて正座している、政宗の姿。
腫れた目にあてがわれた刃がきらり、と光って…
(政宗っ…!!!)
届かないのに、叫ばずには居られなかった。
綺麗な顔に、ざくり、と傷がつく。
泣きもせず、声も上げず、淡々と受け止める政宗が健気で痛々しくて、でも目がそらせない。
『両目で見たお前を、俺は忘れない』
そこで、あの時の言葉が思い出されて。
とうとう私が泣いてしまった所で、また辺りは真っ暗になった―