第5章 縁は異なもの味なもの
「これ、下さい。私のです」
「そうですね。そう思えたのなら大丈夫でしょう」
そう言うと一之助さんは、全てを分かっているかのように、私の手に木箱をそっと乗せてくれた。
「これは千花さん、あなたが選んだものです。そして、あなたも選ばれたのです」
「・・・運命、ですか?」
「さあ、どうでしょう。運命とするのはあなた次第です。ただ、私は赤い糸の話は好きですよ」
「赤い糸?」
「大丈夫、あなたなら探し出せます」
「本当に?」
「はい。世の中そんなに悪くありません。あなたはあなたの思う道を選べばいい」
「私の思う道・・・」
「信じてあげて下さい」
「はい」
そう話す一之助さんの声は優しくて、少し掴みどころのないような彼の話も、何故かすべて素直に受け入れられた。そして政宗の香りを感じながら、木箱をゆっくりと握りしめた。